Masuk「ん? ……はい? 俺に忠誠をって……早すぎじゃないの? ミリアの婚約者になっただけだよね? しかも公式じゃないし。次期皇帝……? 早すぎるだろ」
俺は驚きを隠せない。予想外の展開に、頭の中が疑問符でいっぱいになる。ミリアに組まれた腕の感触も忘れて、思わず立ち止まってしまった。
「何を仰っているのですか。もう! 前に言いましたでしょう? お父様に認めていただいたと!」
ミリアは頬を膨らませ、不満そうに俺を睨む。その青く透き通った瞳は、拗ねた子供のように潤んでいる。そして、組んでいた腕をわずかに強く絡ませてきた。
「ああ~……うん。言ってたね」
俺は頭を掻きながら、曖昧に答える。
「お父様が認めたということは、公式に認められていますわ」
ミリアは胸を張り、自信満々に言い切った。その声には、揺るぎない確信が込められている。
「そうなの?婚約発表もしてないし、いつでも取り消せるでしょ?」
俺はまだ、状況が飲み込めずにいた。認識のずれが大きすぎる。
「簡単には取り消せませんわ。各王国宛にお父様がお知らせをお出しになられましたもの」
ミリアの青く透き通った瞳が、してやったり、とばかりに輝く。その表情は、まるでいたずらを成功させた子供のようだ。口元には、満足そうな笑みが浮かんでいた。
「はい? お父さんは嫌がってたんだよね? 自分から手紙を出すとは思えないんだけど?」
俺は眉をひそめた。どう考えても皇帝が自らそんなことをするとは信じられない。疑いの眼差しでミリアの顔をじっと見つめた。
「ええ。わたくしが頼んでお知らせを出してもらいましたわ」
ミリアが満足そうな顔で言ってきた。その笑顔は、どこか小悪魔的だ。青く透き通った瞳が、わずかにキラキラと輝いている。無理やり感があるけど……ミリアが満足してるならいいか。お父さんは不満に思っているだろうけど。だが、ミリアの表情は、どこか得意げで、俺の驚きを楽しんでいるかのようにも見えた。彼女は、俺の腕に絡ませた自分の腕を、さらに優しく押し付けてきた。
♢バカ貴族との遭遇とミリアの負けず嫌い町の中を護衛を連れてミリアと歩いていると……嫌な予感がした。先ほど、国王の前で癇癪を起こしていたバカ貴族が、護衛と人相の悪い集団を連れて、まるで待ち伏せしていたかのように目の前に現れたのだ。その集団は、見るからに質の悪い連中で、街の喧騒の中に不自然な静けさを生み出していた。彼らの視線は、獲物を狙う獣のようにギラギラしている。
はぁ……。さっきの事の逆恨みってやつね。これでは厄介だ。相手にしないように他の道から行くのが賢明だろう。
「他の道から行くよ」
俺はミリアの腕を軽く引き、方向を変えようとした。彼女の腕から伝わる体温が、状況の緊迫感をわずかに和らげる。
「どうしてですの?」
ミリアは小首を傾げ、不満そうに尋ねる。その青く透き通った瞳が、俺の顔を見上げる。まるで、何が起こっているのか理解できない、とでも言いたげな表情だ。彼女の優雅な立ち姿は、目の前の危険を一切感じていないようだった。
「あいつに係わりたくないからだけど?」
俺は素直に答えた。余計なトラブルは避けたかった。
「逃げるみたいで嫌ですわ……」
ミリアは唇を尖らせ、頬を膨らませた。その可愛らしい仕草に、俺は少し呆れてしまう。こんな時まで、負けず嫌いを発揮するとは。
「お姫様が、自ら危険に飛び込んでいくのはダメだと思うよ?皆を巻き込んじゃうし」
「ユウヤ様が居れば安全ではないですか~」
ミリアは甘えるような声で言う。俺の腕に絡みつく力が、少しだけ強くなったように感じた。その指先が、俺の服の生地を優しく掴む。
「それで、もし俺が殺されちゃったら?」
その言葉を聞いたミリアは、はっとしたように俯いてしまい、小さな声で答えた。その肩が、微かに震えている。
「ううぅ……そんな訳ありませんわ……」
彼女の青く透き通った瞳は、今にも涙がこぼれ落ちそうなほど潤んでいた。その姿を見ると、俺も少しだけ心が痛む。
「もしも転んだり、まぐれで斬られたり、気付かない罠が仕掛けてあったりさ」
俺はさらに畳み掛ける。ミリアは堪えきれなくなったのか、大粒の涙を零しながら俺を見つめてきた。その瞳は、俺を失うかもしれないという恐怖で揺れている。そして、俺の服の袖をぎゅっと握りしめ、自分から他の道へ足を踏み入れた。その小さな一歩には、俺を案じる気持ちが込められているのが分かった。
「逃げたわけではありませんわ。あちらの道は害虫がたくさん見えましたの。気味が悪いですわ……不潔そうでしたし」
ミリアは、涙声ながらも精一杯強がって言った。その健気な姿に、俺は思わず吹き出しそうになった。青く透き通った瞳は涙で濡れているのに、顎を上げて、あたかも高潔な理由で道を避けたかのように振る舞う。
「あ、それ俺にも見えた」
俺がそう言うと、後ろで話を聞いていた護衛やメイドさんたちが、小さく笑いを漏らした。俺も笑いそうになったが、それは害虫が面白かったわけではない。ミリアの負けず嫌いな性格が、あまりにも分かりやすくて、面白くて、可愛らしかったからだ。
♢護衛への指示とミリアの心配他の道に回っても、どうせ追いかけてくるだろう。盗賊風の男たちを連れてきたということは、襲ってくるのは間違いないと確信した。脅しだけで済む可能性もゼロではないが、油断はできない。
「回避はできなそうだけど、大丈夫?」
念の為に護衛たちに聞いてみた。正直なところ、護衛と盗賊の実力差がいまいち分からないのだ。彼らの顔には、かすかな緊張が浮かんでいる。
「盗賊風情に負けるわけありません!」
護衛の一人が、胸を張って力強く答えた。その声には、揺るぎない自信が満ちている。彼は、腰の剣に手を当て、いつでも抜ける準備を整えていた。
「幸運なのですかね……金や権力があった方が良いですが、それが目的で付き合って無いので、金や権力が無くても一緒に居られれば幸せですよ。お金なら俺も持っていますし稼いでますしね。権力が無くても暮らせますよ」 ユウヤは、湯船の縁に頭を預け、夜空を見上げながら淡々と語った。その声には、物質的な豊かさよりも、心の平穏を重んじる静かな意志が宿っていた。「そうか……金や権力が無くても大切にするのだな?」 おっちゃんは、ユウヤの言葉の真偽を確かめるように、じっとその瞳を覗き込んできた。「勿論ですね……権力は、むしろ邪魔ですね、のんびりと暮らしたいので……」 ユウヤが少し困ったように笑いながら言うと、おっちゃんは目を丸くして、腹の底から響くような声で笑い出した。「変わった奴だなぁ! 普通は死物狂いで権力を手に入れようとしている奴等ばかりだぞ?」 だろうね~普通は。でも俺は、権力に魅力を感じないしなぁ……何でだろ?自分でも分からない。前世の記憶があるからか、それとも今の自由な身の上が気に入っているからか。「俺の考えは参考にはならないですね」 ユウヤは、気恥ずかしさを隠すように、お湯を掬って顔を洗った。「いや、それはそれで、珍しい考えで興味があるな。それで、その女と結婚をする気はあるのだろ?」 おっちゃんは、面白そうに目を細め、さらに踏み込んだ。その視線は、若者の覚悟の深さを推し量るかのようだった。「えぇ、ありますよ……婚約してますし。……好きなので」 ユウヤは、暗闇に紛れて赤くなった顔を隠しながら、はっきりと答えた。ミリアやシャルロッテの、時折見せる年相応の笑顔や温もりを思い出すと、自然とその言葉が口を突いて出た。「だったら要らないと言っている権力も付いてくるが良いのか?」 おっちゃんは、現実的な問題を突きつけるように、鋭い問いを投げかけた。その声は、
「夜に、ちょっと温泉に入りたくなりまして……」 ユウヤは、湯船に浸かったまま、平静を装って答えた。「一人でか?」 ヤバそうな人物は、ユウヤの言葉を吟味するように、低い声で問い返した。(あ、モンスターが出るんだっけ……普通は、一人ではこないか……) ユウヤは、自身の不注意を思い出し、内心で舌打ちした。「一応、冒険者をしているのでモンスターとの戦闘は問題ありません。日頃の疲れを癒やしに温泉に入りにきました」 ユウヤは、自分の職業と目的を簡潔に伝え、警戒心がないフリをした。「そうか……モンスターが活発になる、こんな夜中に温泉に入りに来るとは相当な強者なのだな。そういえば、ここに来る途中にモンスターが道端に大量に倒されていたな……」 その人物は、冷めた視線でユウヤを値踏みするように見つめ、ユウヤの通ってきた道の状況を指摘した。 その人物の胸には、昔受けたデカい刀傷の跡が、暗闇の中で薄っすらと白く見えた。それは、彼がただの強者ではないことを示す、凄絶な過去の痕跡であった。(いやいや、そっちの方が強者っぽいですけど……! やっぱり兵士のお偉いさんかな……? 顔も暗闇の中で薄っすらと見えるけど、今までに会った中で一番強そうで恐いな) ユウヤは、相手から発せられる重圧に警戒心を強めた。(あぁ、言われてみれば、倒したモンスターを放置してきちゃったな。ちょっと……不味かったかな?) ユウヤは、後始末を忘れたことに冷や汗をかいた。(それで、他の人は温泉に入っている気配は無さそうだけど……周囲に展開している気配からして、この人の護衛なのか……?)「それで道に転がっていたモンスターは、お前の仕業なのか?」 その声は、断定的な響きを含んでいた。
ムッとした表情のシャルロッテが玄関で出迎えてくれた。彼女は、両腕を組んで、不満げにユウヤを見上げていた。シャルロッテは、ムッとしていても頬を膨らませて可愛いオーラを出しているので、ユウヤにはたまらなく可愛く感じてしまう。(その……ぷくぅと膨らませた柔らかそうな、ほっぺを触りたいんですけど) ユウヤは、衝動的に手を伸ばしたくなるのを、必死に我慢した。「もお、遅いですわぁ……」 シャルロッテは、玄関先で待ちくたびれた様子で、膨らんだ頬をさらに膨らませて訴えた。「別に、遊びに行っていた訳では無いのですわよ」 ミリアは、冷淡な視線をシャルロッテに向け、自分の正当性を主張した。「分かっていますけれど……お姉様は、ユウヤ様を独り占めし過ぎですわっ」 シャルロッテは、嫉妬の炎を隠さずに、切々と訴えかけた。「こうもウルサイのなら、婚約を認めるんじゃなかったかしら……」 ミリアは、一瞬、ゾッとするような冷たい声で言い放った。 シャルロッテは、その言葉にハッとした表情になり、ユウヤの腕に慌ててしがみついた。その手には、強い焦燥感が込められていた。「ううぅ……ヒドイですわ……ユウヤ様からも、お姉様に抗議をしてくださいっ」 シャルロッテは、ユウヤに甘えるように助けを求めた。「はぁ~……俺が居ないと、二人は仲が良いのに困るよな~」 ユウヤが呆れたようにため息をつきながらそう言うと、二人は一瞬顔を見合わせ、ミリアが申し訳無さそうに言ってきた。「すみません。本当に仲が悪い訳ではないのですが……からかってしまって」 ミリアは、わずかに頬を赤らめて、視線を逸らしながら小声で謝罪した。「はい……おふざけですわ」 シャルロッテも、ユウヤの腕から離れ、
「何で、ミリアが勝手に決めるんだよ」 ユウヤは、自分の意思を無視されたことに、少し苛立ちを込めて言った。「ユウヤ様なら、お分かりになられるでしょう?」 ミリアは、ユウヤの置かれている立場と政略的な必要性を暗に示し、諭すような目線を向けた。「まぁ……分かるけどさ。また、相談もされてないんだけど?」 ユウヤは、理解はできるが不満は残るという表情で、不服を唱えた。 ミリアが俯いて、また怒られるという表情で、申し訳無さそうに言い訳をしてきた。「相談をしても答えは変わりませんし、必要ないかと……ユウヤ様が要らないと言うのであればお断りいたしますけれど……?」 ミリアは、俯いたまま、小声で言い訳をした。その声には、自分の判断への絶対的な自信と、ユウヤの機嫌を損ねたくないという気持ちが混ざっていた。「今回は、良いけど次回からは相談をしてよ」 ユウヤは、ミリアの性格を理解し、強く叱責する代わりに、今後のルールを明確にした。「はい……分かりました……」 ミリアは、心底安堵したように顔を上げ、素直に頷いた。 ミリアは、今まで文句を言われず自分の考えた通りにしてきて、相談をするという習慣がなかったから仕方ないけど、慣れてもらわないと。ユウヤは、ミリアの行動原理と彼女を変えていく必要性を静かに認識した。 今回のミリアの考えは、話からすると多分だけど、弱小の王国の娘は要らないと言っていたので、強い王国の娘をもらい裏切らないようにする意味と忠誠の証なのかな?王様も娘を差し出す見返りもあるだろう、皇帝の一族の側室になれば恩恵もあるんじゃないかな……。まあそれに……今回は幼い少女で無害と判断をしたのかもね。ユウヤは、ミリアの打算的な戦略と安全性の評価を冷静に分析した。「本人のユフィリスは、嫌がってるんじゃない?」 ユウヤは、政略結婚に巻き込まれる少
どこでって……前世で歴史とゲーム、アニメ、映画、ドラマで学んだとは言えないよな。ユウヤは、脳裏に浮かぶ大量の知識の源をどう説明するかに、一瞬思考を巡らせた。「え? 独学だけど……」 ユウヤは、当たり障りのない言葉を選び、曖昧に誤魔化した。「独学ですか? 独学では領主経営学を学ぶのは必要ないですし無理だと思いますけれど……ですがユウヤ様なら可能なのかもしれませんわね」 ミリアは、ユウヤの発言に疑いを持ちながらも、彼の非凡さを考えればあり得ると、無理やり納得しようとした。 良く考えてみれば、領主経営なんて独学で学ぶのはおかしいよな……。領主になる予定や貴族で領主の側近で働く予定がなければ無駄な知識だし、そうであっても独学では無理か……。書物等売っている訳じゃないし、領主が貸してくれる訳もない。ユウヤは、この世界の常識に照らし合わせ、自分の発言の不自然さを再認識し、冷や汗をかいた。 今ならミリアとシャルロッテと婚約したので、これから勉強するからと言えば、国王は喜んで書物を貸してくれるし、優秀な先生の手配をしてくれるだろうけど。ユウヤは、現在の立場が、自分の不自然な知識を後付けで正当化できることに気づき、少し安堵した。「薬屋をやってると色々な風変わりなお客さんが来て話をしてくれてさ、興味があったから話を聞いているうちに学んだって感じかな」「そうでしたか」 とっさの言い訳だったけど、ミリアは納得してくれた様で良かったが、国王を放っておいて良いのか?一応この国の王様だぞ?ユウヤは、目の前で繰り広げられる権力構造の逆転に、内心で首を傾げた。「ミリア……王を放っておいて二人で話すのは、どうかと思うぞ?」「そうですか? なにか問題あります?」 ミリアが怪訝そうな顔で国王の方を見て確認をすると、国王は顔を青ざめさせ、慌てた様子で両手を振って否定をした。「問題などありません。私を気にせずお話を続けてください」
まあ、普通は貴族からお金を出させるとか、寄付金を募るとか思っているんだろうけど……ユウヤは、彼らの甘い認識と、自分がこれから行おうとしていることの根本的な違いを認識した。「ふざけるな! 横暴だ! 貴族の監禁は重罪だぞ!」 上級貴族の男が、激昂した声で会議室の扉の向こうから叫んだ。彼の顔からは、さっきまでの余裕が完全に消え失せていた。「監禁では無く……証拠隠滅阻止、調査の妨害防止の為の一時的な投獄です。罪状は王国のお金の私的な使用の疑いなので、解決するまでの間は我慢していてください」 ユウヤは、冷静に、しかし断固とした口調で法的な論理を突きつけた。「なんだと? そんな証拠はないだろ! 推測で貴族を投獄するなどありえん! すぐに開放しろ!」 男は、さらに声を荒らげた。急に貴族達の顔から余裕が消えて慌てだしたが、国王が毅然とした表情で兵士に命令をした。 「直ちに執行せよ!」 その声を受けて、訓練された上級兵士や騎士たちが次々に会議室へ入り、大声で抗議する貴族たちを迅速に拘束して投獄した。応接室と会議室を隔てる扉が閉ざされ、激しい怒号と抵抗の音が遠ざかると、室内は再び静かになった。「では、毎回税金を納めていない貴族と、納めている貴族を教えてください。真面目に税金を納めている貴族は関係ないので開放してあげてください」 ユウヤは、静まり返った室内で、落ち着いた声で国王に次の指示を出した。その声は、一切の私情を挟まない、公正な判断を求めていた。 国王は、恐る恐る、税務に関する資料を提出した。 税金を減額申請をしている領地、納めていない領地の資料を調べて、ミリアとシャルロッテが馬車を駆り、足早に領地を見て周り、領民からも話を聞いた。その結果、25の領地の内、15の領主が不正をしていて、豪邸に住み、領民からの酷い噂ばかりが報告された。強制的に調べた結果、不正の事実が確実であると確認でき、国王の厳命により、爵位の剥奪と全財産の没収が実行された。 それと、モンスターが出現してというのは真っ赤なウソですぐにバレた&hell







